2012.1.30 update


【カブトガニを守る会大分支部 川村さんへのインタビュー】
(捕獲記録、産卵数のデータは、「日本カブトガニを守る会大分支部」提供)

 

-保護活動について

 

岡本)川村さんが個人で行っている保護は干潟で卵を探し出し採取するところから幼生の飼育まで体力勝負という感じですね、市役所職員としても保護活動に当たられていますが
カブトガニの保護活動の苦労する点などはありますか?

 

川村)
☆漁業者との兼ね合い
10年前、杵築市の水産係としては漁業者の「厄介者」であるカブトガニを保護する事に多少の抵抗がありました。当時元気の良い漁業者出身の市議会議員によくどやされておりました。
しかし、現在では減少したカブトガニに同情してくれる漁業者も出てきました。(漁師の網にほとんどかからない)
☆予算の減少
カブトガニの保護には多少の予算が必要になるのですが、杵築市からの補助金は他団体の兼ね合いもあり完全に0円。守る会大分支部会員の会費でなんとかやりくりをしている状態です。

 

岡本)川村さん個人のカブトガニ保護活動に対する「思い」や「夢」はありますか?

 

川村)大分県立海洋科学高校卒業後、平成9年度に杵築市役所に水産専門職として採用されました。このとき、杵築市役所はカブトガニの保護に力を入れており、市役所の様々な部署(観光、財政、教育、環境、水産等)の職員で組織する「カブトガニ保護推進委員会」がありました。事務局は水産担当者でありましたので、採用と同時にこの委員会に加入する事になりました。
当時、杵築市役所玄関口には大型水槽があり、カブトガニが展示飼育されていましたが、高卒で最年少であった私は当然のごとく飼育係を押しつけられてしまいました。

数年飼育を担当しているうちに、カブトガニに愛着は薄れていったのは事実であります。
その理由は、
1.カブトガニは無愛想で人に懐かない。
2.死んでしまうと言葉では表現できない悪臭を放つ。
3.漁業者の一部はカブトガニを「厄介者」扱いしており批判の的になる・・・

 

岡本)びっくり。カブトガニへの愛情が薄れた時期があったとは(笑)

 

川村)しかし、「日本カブトガニを守る会」総会等に参加し、各生息地で行政に頼らず個人的に保護を続ける方々のカブトガニに対する熱い思いを聞くにつれ、カブトガニに対する愛着は戻ってきました。 採用10年目、何か自分なりにできる事は無いかと考えていた矢先に税務課へ人事異動。カブトガニはおろか海とも完全に引き離されてしまいました。

税務課に3年間勤務した後、水産係に戻ったわけなのですが、この3年間は客観的にカブトガニ保護行政を見る良い期間になりました。(この間に守る会大分支部事務局に任命される)
他団体の兼ね合いもあり、守る会への杵築市からの補助金も無くなりましたが、お金を使わずに出来る事は無いのか・・・と考えた結果が幼生の保護でした。

 

川村)当然、餌代やエアポンプ等の費用はかかるのですが、私が守る会大分支部事務局でもありますので、支部長の西原氏と相談し、これを負担していただける事になりました。
保護は杵築市、予算は守る会大分支部、公私混同ではありますが、きれいごとは言ってはいられません。今のペースで減少が続くと近い将来、杵築市からカブトガニはいなくなるかもしれません。また、この幼生保護の結果が出るのは8年~10年後、産卵に来るカブトガニの数となるわけであります。

けれども、少しでも長く「カブトガニの生息する杵築市」であってほしいと思い、地道な作業になりますが自分なりの保護活動を守る会大分支部や研究者等のご教授を受けながら継続していきたいと思います。

孵化直前カブトガニの回転卵

 

カブトガニ赤ちゃん脱皮中。1齢脱皮

 

岡本)カブトガニの幼生保護といっても先ずはカブトガニの卵を干潟で探すところからの作業、そして毎日の餌やりや水の管理。これがずっと続くわけですからその情熱には頭が下がります。難しい事ですが行政・民間・個人の連携が取れれば保護活動の効果も上がりそうですよね。個人による長期の保護活動はサポートも必要だと感じました。

では、川村さんの「海」や「海洋保全」に対する思いはありますか?

 

川村)ダイビングの師匠でありますダイビングショップDiveONE石井さんは色んな海を見てきた訳ですが、やはり人間(ダイバー)が壊した海もあるのは事実だと教わりました。私がこれまで見てきた海はほんの少しでありますが、私もそう思います。人間が壊した自然を人間が元に戻すというのはかなりの労力と時間が必要になります。

ただ、何もしないよりは自分なりに何か出来れば・・・。カブトガニの保護もそうですが、ダイビングに行ったときには1つでもゴミを拾う。サンゴを壊さないようにダイビングスキルを上達させる・・・小さな事が重なればきっと大きな成果になると信じております。

 

岡本)最後に保護活動を通してメッセージがあればお願いします。


川村)積極的な保護活動を始めたばかりなので、偉そうな事は言えませんが、ひとりひとりが環境問題に目を向けて、出来ることから少しずつ始めていただきたいですね。

 

岡本)川村さんのアクションは長期的で根気のいる保護活動です。絶滅しようとしているカブトガニの現状や川村さんのような長期を見渡した地道な活動をもっと多くの人に知ってもらいたいと強く思いました。10年後も50年後もカブトガニがいる杵築市であるよう私も応援しています。

 

カブトガニの展示を見つめるカームラさん

 

◎資料 提供:杵築市役所/日本カブトガニを守る会・大分支部

 

◎カブトガニ保護に興味のある方はぜひこちらへ
日本カブトガニを守る会の会員になることで保護活動を応援できます。
大分支部年会費2千円。問い合わせ先/杵築市農林水産課 0978-62-3131
定期的な観察会も行われています。

 

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